痛恨の「ピース紺」
30年くらい前に「色はピースコン」と言われたことがある。
私は印刷会社の営業担当で その仕事は私の担当ではなく、上司の受けた仕事だった。
ところで 普通印刷物の色って DICの色見本をくっつけて 指定する。
色って沢山種類があるから、間違えないように。
ところが その時 その指示を受けたのは「電話」だった。
そして 私もその時食い下がって聞けばいいのに、「はいわかりました!ピースコンですね」とだけ言って電話を置いた。
何か用事で、上司はいなかった。
しかしその日は金曜で、印刷機をその日中に回さないと、月曜日まで完成しない。金曜日中に刷ってしまえば、その後すぐに製本に回せた。その頃製本屋さんは土曜日でも動いていたから。
逆にその日に印刷できなかったら、納期が3日くらいずれてしまう。
そしてスケジュールはキツくて、どうしてもどうしてもどうしても!月曜日に納品しなければならなかった。
上司はいないのだから、私が現場の人に指示をださなければならなかった。
「色はピースコンでおねがいします!」
ところが 「それなに?」と言われた。
私は新入社員だったから、お客さんが言った通りのことを言えばそのまま通じるのだと思っていた。
その時色んな人に聞いたんだけれども その時聞いた全員が「それなに?わからない」と言った。
あせった私は もういちどお客さんに電話をかけた。
もうお客さんはいなかった。
どうしようか迷ったけれども、その時私は 「たぶん青だ!」と思い、適当な青の色見本をつけて 「これでお願いします」と現場の人に頼んだ。
ちなみに印刷物というのは オーダーメイドなのだから 誰かがGOサインを出さないと、勝手に現場が印刷をする、ということはない。
誰かが GOサインを出さなければ 約束した日に納品できず、それはそれで責任問題だった。
結果ものすごく怒られた。私の貼り付けた適当な「青」は ピースコンではなかった。
それはもう、叱られても仕方がない。
納期は間に合ったけれども イメージ通りにいかない、というのはお客さんにとって無念だったろう。
上司に、「ピースコンがわからなくて」....と言ったらどういうわけか 上司は「あーそれはまずい」というだけでピースコンが何なのか、やはり教えてくれることはなかった。
印刷用語って割とある。「ー」は「おんびき」。太い罫線は「裏ケイ」とか そういうよく使うことばはわかっていた。色も「金赤」くらいは 私にもわかっていた。社員教育が全然ない会社だったから、見様見真似で覚えていて、わからないことは無限にあった。
お客さんのところに謝りに行ったら、お客さんは怒っていて 両切りタバコ「Peace」を差し出した。「この色だよ、ピース紺」。
うちの会社では通じなかったピース紺。
しかし30年の時を経て今わかった。
ピース紺は ごく普通の印刷用語だった。
マゼンタ100,シアン100って簡単やん!
どうしてあの場にいた全員が「わからない」と言ったんだろう。
ベテランばかりいて、なぜ。
不思議でならない。
Edited by じゅんか 2021-11-15 20:07:14
Last Modified 2023-11-25 10:10:21