むかしむかしのことじゃった
むかしむかし そのむかし
わたしがこどもだったころ、私は店番をしていました。
たまにくるお客さんで、「Iさん」という物静かな人がいました。
物静かなのも当たり前で、この人は 全く聞こえない、聾唖の方でした。
Iさんは 全然話せない人だったのですけれど、わかりやすい身振り手振りで コミュニケーションをとりました。
でもこちらの言うことは一切聞こえてないわけで 店番のわたしは いつもメモとえんぴつを持ってやりとりをしました。
Iさんはとても賢いひとで、わたしは好きでした。
元々は船大工だったらしく、器用な人でした。
テレビを見るのが好きて
「聞こえなくても 大体わかる」と言っていました。
Iさんは もういないのだけど、Iさんが作ってくれた小さな戸棚は今も実家にあって、見るたびに思い出します。
Edited by じゅんか 2023-07-07 10:37:45
Last Modified 2023-07-09 11:28:02