山吹が咲く
少し用事が立て込み 嵐も来て しばらく畑に行けなかった。
今日もいくつかの用事をすませ 遅くなった。
けれども夫は 畑へ行きたくてたまらない。
少々の苗を買い、畑に行く。
坂道をゆっくりとのぼると 山吹が咲いていた。
ああ やまぶき。
少し手折った。
「七重八重 花は咲けども山吹の 実のひとつだに無きぞ悲しき」
少し前から 何度も何度もこの句が私の頭をぐるぐるしていた。
太田道灌のエピソードを思い出す。
私は教養のない女ではあるけれど
このように粋な意思表示をしてみたいものだ、と思う。
夫はこのような趣味を持つ私を見栄っ張りだ、という
一般的に通用しないコミュニケ―ションを使う事に何の意味があるのか、と。
その通りなのだけれど こういう雑学ネタが好きだし
何よりただ「ウチに蓑はありません」というより 美しいではないか。
それにしても 山吹がこの季節に咲くものだと言う事を初めて知った。
長生きはしてみるものだ。
私は若い頃 なんとなく「28歳までには死ぬだろう」と思っていた。
1999年で世界が終わると思っていたからだ。
思えば滑稽なことだ。
本当にその頃に死んでいたら 私は山吹がいつ咲くのかも知らなかった。
太田道灌が雨に降られた季節がいつだったのかに想いを馳せる事もなかった。
なんだかんだと言いながら 私は良いご身分である。
日々 草花を眺めているのだから。
Edited by じゅんか 2008-05-23 23:34:03
Last Modified 2008-05-23 23:58:47