実家事務所の話/大濱さん(2)
実家事務所のおはなし 続きです。
興味のない方はスルーでお願いします。
参考記事
『完全敗訴から控訴審終了 長文』
姉のブログ/大濱さんという人1
実家事務所を作った方大濱浄竿さんは こういう方でした。
さて、そういえば、と思い出しました。
大濱さんの日本にある作品は少ない、と言いました....。それはですね...。
大濱さんは若いころ 仕事についての妥協のない人だったんですよ....。
誰が見ても たとえ 板一枚削っていても この人の技術がすごいことはわかるわけですから、仕事の依頼は来たんです。
ところが 完成するまでに施主ともめてしまい、完成しないことが何度もあったのです。
たとえば 実家事務所を作る際に、左官屋さんがノイローゼになったことがあったそうです。
頑張っても頑張っても頑張っても 大濱さんのOKは出ないからです。
「もうどうしていいかわからない」と家から出てこなくなり、大変だったそうです。
また、「壁土はどうしても本聚楽でなくてはいけない」ということで 探し回ったそうです。「本聚楽」という壁土は当時すでに生産されておらず、手に入れることができませんでした。
(現在はただ1軒扱っているところがあるようです。)
「古くて」「良い家」が解体されるタイミングで 壁土をもらってくることからはじめなくてはいけません。これは うちの父と二人で取りに行ったそうです。
今は経年劣化のため一部本聚楽が剥がれ落ちてしまい、違う土が塗られている箇所があります。
するとなぜ大濱さんが本聚楽にこだわったかが 確かにわかります。
味わいが全然違うのです。
でも 一事が万事そういう風では 大変なのです。
アメリカで大きな住宅を作るときは 現場のアメリカ人建築家と打ち合わせするために、何分の一からのレプリカをまず作って見せたこともあるらしいですけども、若い時にそういうことはおそらくなかったと思います。
また 気分が乗っていれば 常人の3倍速くらいで仕事をされていたようですが、逆に気分が乗らなければ 何も作業せずに帰ってしまいます。
「雨が顔にあたったから」
「誰かが現場に入った気配がしたから」とそれだけの理由で帰ってしまうわけです。
「どんなものが」「いつまでに」できるかわからないのに、施主はお金と場所を提供することになるのですから トラブルはまま起こりました。
高級材ばかり使うわけじゃない、と言っても、すべての材料は釘を使わず合板も使わず 無垢材を使って作るのですし、うちは材木屋だから 多少のことは融通が利きますが、普通の施主からすれば どんどん予算が膨らんでいくことになってしまいます。
「確かに立派だ 確かにすばらしい...でも、もうやめてくれ」と言われてしまうらしいのです。
父は完成しなかったいくつもの現場を見て、『どれも素晴らしかった』と言っていましたが.....日本にある彼の建造物が少ないのは そのような理由です。
Edited by じゅんか 2017-03-04 08:40:36
Last Modified 2017-03-16 12:10:50