春随想/ なばなさん(1)
私がまだ20代半ばのころ 出会った人の中に 「なばなさん」という人がいる。
とても 大好きだった。
きっかけは 例によって 嵐を呼ぶ女・寅子ちゃん。
「とってもすてきな場所があるから 来て!」と言われて行った先はオフィス街の雑居ビルだった。
そこはなるほど古い雑居ビルなんだけど、雑多な感じのところじゃなくて シンプルで お店なんかはほとんどなくて 事務所ばかりなんだけれど、吹き抜けもあって 古いエレベーターや 手すり、ちょっとした照明器具や 出入り口の造作が なんというかフランスっぽくて ビル自体もとっても素敵な建物だった。
寅子ちゃんに連れて行かれたのはギャラリーで そのとき飾ってあったのは 絵画だったか 和紙だったか.........
ギャラリーに入るためには 靴を脱いで入る。
そしてその靴を置いておく場所に置かれた靴置き場は 段ボールで簡単に作ってあるのに とてもカッコ良かった!
そのギャラリーのオーナーが なばなさんだった。
その段ボールの靴脱ぎ場を作ったのも なばなさんだった。
なばなさんは 落ち着いた人で 彼女自身が前に出る人ではないのだけれど 心地の良い人だった。
私は普通 ギャラリーで長居することがない。
なぜなら ギャラリーで飾られているものは そこそこ良いお値段のものが多いし。貧乏人が衝動買いできるようなものはないのが普通だと思う。
だから とても良いものが飾られていても 緊張のあまり 長居することができない。
イヤ本当に 恐れ多くて。
しかし なばなさんのギャラリーには その後もたびたびお邪魔した。
Edited by じゅんか 2014-03-31 14:49:56
Last Modified 2014-03-31 16:42:54