春随想 なばなさん(3)
ところで なばなさんは 別に本業があるといっても お金持ちではないようだった。
家庭もお持ちだったと思う。
旦那さんもお子さんもおられたと思う。
でもお金持ちではなかった。
時折、みんなでおなかすいたね....と話していると その場でカレーライスを作ってくれた。
ところがこのビルには 炊事できる場所がなかった。
お水の出るところは廊下にあった 簡単な流しだけで 火が使えるところはなかった。
するとなばなさんは 廊下にカセットコンロを持って来て
その場にあったホーロー製の洗面器をさっとお鍋にして
手に入るだけの材料でカレーを作り ごはんだけを弁当屋さんで買って来て みんなで食べた。
とても奇妙な調理だったのだけど それで十分美味しかった。
そう、彼女は 好きなことをやっているけれども 無茶はしていなかった。
なんだかんだで 彼女の主宰する何かを手伝うことは何度かあった。
何か企画をすれば 必ず費用がかかる。
だから きっと毎回どう運営するかは 大変キツい問題だったとは思うけど、毎回 あまり無理のない運営方法だったし また 協力してくれる人への気遣いも「ちょうど良い感じ」だった。
だから 手伝ってくれる人も 気持ちよく手伝っていた気がする。
少なくとも 何回か手伝った私は 毎回ボランティアではあったけれども 彼女に悪い感情を持ったことは一度も無い。
何事もバランスだよなあ.....。
同じ時期に 同じように 「良いことをしている素敵風な女性」に会った。
素敵「風」な女性と書いてしまうからには 微妙な要素があった。
だから詳しいことは書かない。
彼女はとてもいいことをしているのに、たいていのことで採算がとれていなかった。
したがって ごく普通の支払いを沢山滞納していた。
そして 沢山の支払いがたまっているのに、多くの「お金のかかる良いこと」をやめなかった。
遠く離れて見ていればとても素敵な人なのだけれど
身近になってみれば ものすごく困惑することが多々あった。
あの頃の私から見れば 別々の二人は 同じような世代の同じような人だったけれど、感じることは全く別だった。
同じようなことをなばなさんに頼まれたら すごく気持ちよくやれたのに、
この人に頼まれて 何かを手伝っても 消化できない妙な思いが残った。
その頃には 自分の消化できない思いは何なのか よくわからなかったけれど 今は少しわかる。
何をするにも バランスが大事なんだ!
少なくとも私にとっては。
Edited by じゅんか 2014-03-31 16:15:13
Last Modified 2014-03-31 23:26:35