春随想/ なばなさん(2)
そう、私は「お客さん」としては どの店でも良いお客さんではない。
つまり「金にならない客」である。
そういう意味では どのお店に入る時も 「ごめんなさい。儲からない客で」というような申し訳なさを感じてしまう。
それは別に感じなくて良いことなんだろうけれども お店というものが 維持するだけで沢山費用がかかるのを実感しており「いつも忙しくて、てんてこ舞いな両親」を見て育っている私は 商業目的の施設で 大したお金を落とす訳でもない私が 時間と手間を取らせることにものすごく罪悪感を感じてしまう。
これはしばしば「考え過ぎでしょ」と笑われるタネになっているのだけれど、まあコレが私の生きて行く癖と言ったもので、多分直らないだろう。
じゃあ どうしてなばなさんのギャラリーではリラックスしていたのか....
正直 よくわからない。
なばなさんは フリーランスで違う仕事をしておられ、同じ雑居ビルの一室で仕事をされていた。
ギャラリーは 「やりたいからやっている」ものだったし、その分 普通のギャラリーでは扱わないような 安価なものも多々あった。
私はそれすらも買わないんだけど イヤな顔ひとつされたことがない。
大体は寅子ちゃんと一緒に行ったし、そのせいもあるかな。
寅子ちゃんは 話題も豊富だったし 発想も面白かったし 本人もアーティスティックだったから 場が華やぐ。また、彼女に連れられてこのギャラリーに来るのは私だけではないから 天然の広告塔みたいな人だった。
そして やりたいからやっているギャラリーであっても やはり究極は 「良いもの/価値あるものを知らせてシェアしたい」ということが 何よりなばなさんの望みだったと思う。
そんなわけで なばなさんはいつも 居心地の良いギャラリーに 彼女が見つけた 彼女が出会った素敵なものを きれいに展示し 感嘆した寅子ちゃんや 他の人々が「本当に素敵なのよ」と噂して回った。
誰もイヤな思いをしない。
win-winのギャラリーだった。
Edited by じゅんか 2014-03-31 15:24:51
Last Modified 2014-03-31 16:43:01